たぶん、トクベツちがいな恋。

・・・

温かい空気と、少しだけ甘い匂いと、コトコトという心地よい音が聞こえてきて、目が覚めた。

身体が気持ち悪く湿っている。汗をかいたのだと思う。

…俺は、眠っていたらしい。


ゆっくりとまぶたをあげると、白い天井がぼやけて見えた。いつもの光景。こめかみあたりに張り付いた髪の毛を手でかきあげると、体温と同じ温度になったらしい冷えピタがあたった。


「……あつ、」


思わず、声をあげる。

ぼーっとする。なんで寝てたっけとか、何してたっけ、とか、色々と寝ぼけた頭で考えようとしたけど、すぐには思い出すことができず。

テーブルの上にあった、残されたフルーツたちや、その他もろもろ風邪のためのグッズが目に入って、少しだけ思い出した。


…あ、そうだ、俺。


「ん? 近海、起きたの?」

「…!」


トテテテ、と、台所から軽やかな足取りでリビングに入ってきた女の子。
手には、俺のマグカップとスポーツ飲料水。


「…茶々…? なんで…」


なんでここにいる? なんて、聞こうとした瞬間に、自分がものすごくバカな質問をしようとしていることに気づいた。

時計を見る。
…寝る前までの記憶から、まだ1時間も経ってない。


「何寝ぼけてんの? すぐ寝ちゃったくせに!やっぱり体調悪かったんじゃない!」

「えっ? いや、あの…」


ホラ!と、マグカップにスポーツ飲料水を入れられて、そのまま目の前に差し出された。


コップの水面に映った自分の顔は、ひどく困惑している。そして、髪の毛ボッサボサ。情けない姿。


とても、好きな女に見せる姿じゃねーな。


かっこわる。



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