たぶん、トクベツちがいな恋。
注いでくれたものを口に含む。健康な時に飲むより、美味しく感じた。鼻は、微妙に詰まっているはずなのに。
「少しは寝れた? 汗かいてるわね」
「あぁ、陽も当たってたからか、アチィ」
「着替えた方がいいよ。逆に冷めちゃうから」
「おー」
マグカップに入っていたぶんを飲み干して、テーブルの上に置いた。茶々はそれを確認して、もっと飲めと言うように追加していた。
「…わり。ちょっと着替えてくる」
「うん…」
「…」
心配そうにこっちを見る茶々の前髪に少しだけ触れて、その場を去る。
お風呂場に着替えを持って行って、重ねてあったタオルで濡れた身体を拭いた。
その瞬間に、ボッと上がってくる体温。
「…っ」
…今、ようやく現実味というか、そーいうのがふつふつと湧き上がってきているわけだけれど。
“ 近海のこと、すきだと思う…っ ”
「———っ」
…あれ、夢じゃないよな。まさか夢オチでしたってこと、ないよな。
自分の記憶に自信がない。誰かに聞きたい。あれは本当に現実だったのかってこと。
「…っ、はあ——…」
少し頭を冷やしたかったから、軽くシャワーも浴びた。ずっと汗かいて色々気持ち悪かったし。スッキリしたかったし。
新しい部屋着に着替えて、濡れた頭にタオルを乗っけたまま、茶々がいるらしいリビングに帰った。
…まだ、全然夢心地なんだけど。
ガチャリと、リビングのドアを開けると、すぐに台所に立つ茶々の後ろ姿が見えた。
「……近海、あがった? お粥できそうだけど食べられる?」
「…」
ずっと鍋と睨めっこしたまま、おたまでゆっくりとかき回している。
いつも見ている後頭部。背中。茶々には変わりないけれど、やっぱりどこか、違うように感じてしまう。
そう思うと、やっぱりこわい。
いろんな面で、女々しいよなあ、俺も。
…なぁ。
さっきのは、ほんとう? それとも、夢?
「…? 近海? なに黙って……」
「……」
茶々が左手に持っていた黄色い卵が、一気に鍋の中に流し込まれたのが見えた。流し込まれたというか、こぼれたのかもしれない。
「…っ、近海…?」
「ん…」
俺が、邪魔してしまったから。