たぶん、トクベツちがいな恋。


自然と、垂れていた冷たい指先を取っていた。


「…どうしたの?」


離れても大丈夫。 茶々が同じ大学に受かったら、また一緒にいられる。

…春からは、また、一緒に。


…でも。



「…最後に、すげー重たいこと言っていい?」



ひとつだけ、確認しておきたいことがある。どうしても、離れる前に、聞いておきたいことがある。


はっきりと、口に出すのはこわいけど。




「——俺の、彼女になってよ」




それでもやっぱり、茶々との関係に、ちゃんとした名前が欲しいから。

…そんなことを言ったら、茶々はまた、「バカじゃないの」って、笑うだろうか。



繋がった指先。ぎゅっと小さくしまる力。

少しだけ下を向いた顔。
わかってる。今、茶々がどんな顔をしているかなんて。


わかってるから、応えてほしい。



「…近海、」

「うん」

「茶々にそんな風に言うこと、“ 重いこと ”なんて、言わないでいいよ」

「……え?」



黒目がちの、宝石のような目が、こっちを向いた。
また、赤くなっていることは分かるけど、それでも、何かを決意したような強い瞳が俺をとらえる。


「茶々は、近海にそんな風に言われるの、うれしいんだから、重くなんかないよ」


「——…」



「茶々だって、近海のいちばん近くにいたい」



…気がつけば、また、腕の中には大事な大事なぬくもり。
まるで、彼女の言葉が合図だったのかというように、溢れ出てくる想いでいっぱいで。


…一瞬だけ目に映った、茶々のキラキラとした、そして凛とした顔が、声が、ずっとずっと、脳内でこだましていた。



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