たぶん、トクベツちがいな恋。


・・・☆


世の中に存在する男のほとんどは、好きな人の「トクベツ」が見られたら、それだけで舞い上がってしまうんじゃないかと思っている。



「…近海!」


俺の大学の正門が待ち合わせ場所。俺は少し、時間をずらして。一緒に見るのは変に緊張するからと、前日に茶々から言われた。

トテテテ、と、いつものようにツインテールを揺らして、白い息を吐きながら、小さい身体が駆け寄ってくる。


…俺に向けられている、“ トクベツ ”


今日も、ちゃんと目の前にあった。



「近海…っ、近海、近海……、ひゃっ!」

「…!!」


何度も名前を呼んで、走っている姿を、心の底から愛おしいと思った。目の前でグラリと揺らいだ身体を、慌てて支えるために飛び出していく。


「…っぶねー…、落ち着けって」

「おっ、おおお近海…!」

「なんだよ」


今日も、ちゃんと腕の中。1週間ぶりに会ったと言うのに、ちゃんとあいさつもなしか。そーいうとこ、茶々らしくて好きだけど。


…茶々の、合格発表当日。朝から大学にはたくさんの人たちが集まっていた。ネットでも発表されるし、わざわざ貼り出されるのを見に東京まで来なくてもよかったのに。

ネットで見るのは逆に怖いからとか言って、朝早くから鎌倉を出て1人で東京に出てきた茶々。今日は、ウキョウくんと初ちゃんは、一緒じゃないらしい。

初めは、2人だけで、会うことに決めた。

茶々が、俺にいちばんに報告したいからと、また少し照れながら言ってくれたからだ。



「…ご、合格…、してた…!!」



安堵したその顔に、俺もホッとした。まぁ、カタイだろうなとは思ってはいたけど、いざその答えを聞くとなると、やっぱり感動するもので。


「…はぁー…、まじか………」

「ま、ま、ま、まじ」

「よかった………」


思わず、その場に座り込む。身体の力が抜けていくとはこのこと。茶々を受け止めたまま座ったから、そのまま2人で校門前に小さく丸まる。



< 163 / 166 >

この作品をシェア

pagetop