たぶん、トクベツちがいな恋。
1年前を思い出した。俺は、わざわざここまで足を運ぶようなことはしなかったけど、やっぱり合格の文字をもらえることは、自分が認められたみたいで嬉しいんだ。
「ねえ! 春から近海と同じ大学よ!」
「そうだな」
「珠理だっているし! あっ……、初からメッセージ……。あっ、ねぇ近海!!初も右京くんも受かったって!合格だって!!」
「そっか、よかったな」
目の前の茶々は、ひたすらニコニコと合格を喜んで。逆に泣きそうになっていたのは、俺の方だった。
…よかった。ちゃんと、茶々も俺たちの方に来れて。
春から、ちゃんと俺たちの未来もまた、動き始めることができる。
「…頑張ったな、茶々」
「オーミ…」
「ちゃんと、お前も俺たちと同じ場所に立てたじゃん」
「……っ、うん…っ」
数ヶ月前までは、不安でいっぱいだっただろうに。頑張ったから、今があるんだ。ぜんぶ、茶々の力だ。
「…近海の背中、ちゃんと捕まえられた」
ぜんぶ、茶々が頑張ったからなのに。まだそんなことを言う彼女に、またたまらない気持ちにさせられる。
「だから、初めから追いかけてたのは俺の方だって。それは俺のセリフな」
「…あたしのセリフだもん」
「はいはい」
少しだけ膨れていた頰をつねった。それと同時に向けられる大きな目に、俺の姿が映る。
…これからは、ずっとそばにあるもの。
俺の。俺のトクベツ。
俺だけのもの。
少し困ったように逸らされた目。だけど、ふれられていることを嫌がらない彼女をいいことに、そっと、距離を縮めていく。
となりに伸びていた影が、ひとつに繋がって。
冷たい空気の中で、くちびるだけが、ひたすら熱い。
「…早く引っ越してこいよ。待ってるから」
「わ、分かってる…っ。すぐ準備するよ」
「ま、俺のとこでもいーけど」
「…っ」
みんなが、離れた場所で合格発表ばかりを気にしているのをいいことに、まだ蕾が膨らみかけたばかりの桜の木下で、しばらく彼女のぬくもりにふれていた。
「…っねぇ、甘すぎだよ。ここ外…」
「仕方ねーじゃん、好きなんだから」
「…!! し、仕方なくない!!」
甘い、甘い、甘すぎる世界が、また新しく始まるということ。
それは、俺たちのスタート。
新しいカタチでの、はじまりだ。