たぶん、トクベツちがいな恋。
「ちゃんと細かく、茶々の面倒見てあげてる近海、やさしい♡」
湯気が上がるティーラテに自分の影が映る。ゆらゆらと揺れるそれをじっと見つめていると、隣で俺の方を眺めていた珠理は、意味有りげにフッと微笑んだ。
「…ばかにしてんな」
俺の気持ちに気付いてないわけねーのに。なんて奴だ。
「してないわよう。近海の気持ちが、ちゃんと茶々にも伝わればいいなって思ったの」
「………あっそ」
俺の気持ちが、茶々に伝わる。
そんな奇跡、起こるのであればもうとっくに起きているはずだ。もう、何年も何年も、俺は茶々のことしか見えてない。
俺に当たり散らしていつも不機嫌な彼女を、どうしてかずっと好きで好きで仕方ないのだから。
…でも。
「…残念だけど、まだその壁はなくならねーな…」
自分で言ってて、むなしくなった。
隣に立っているのは、彼女の元恋人。いくら茶々からの一方通行な恋だったと言っても、昔一度は、壁を破って繋がりを持てた人。
…俺の欲しいものを、先に手に入れた人。
「…近海、」
「気長にいくしかねーな!とりあえず、今はアイツ、勉強でいっぱいいっぱいだから、あんま混乱させたくねーし。当分はお前の惚気に付き合ってやるよ」
本当は、焦る気持ちでいっぱいなんだけど。
でも、俺の勝手で好きだとか言ったところで、それは俺の気持ちを押し付けることと同じ。
それだけは、どうも気が進まない。