たぶん、トクベツちがいな恋。
席は2階にあって、2人で登って、席についた。テーブルじゃなくて、カウンター席。勉強しているところを大っぴらにしたくないからと、茶々が選んだ。
目の前はガラス張りになっていて、その先には駅のホームが見える。俺が乗ってきた横須賀線だ。
カウンターに注文したケーキとカプチーノを並べて、写真を撮りだす茶々。何度も角度を変えて撮っているのは、やっぱり女子って感じがする。
その姿を横目で見ながら、俺はコーヒーを手に持って口に運ぼうとした。でも、その瞬間に、茶々の少し怒った声が耳元で響く。
「ちょっと近海!待ってよ!」
「え?」
カップを持った右手を、小さな手で押さえられる。
「まだ写真撮り終わってないから!そのままそこに置いといて!あと1枚だから!」
「は?」
わけも分からないまま、茶々に言われた通りにカップを置いた。そして再びスマホを眺め始める茶々。俺も思わず、その画面を覗き込んだ。
「何やってんの?お前」
「は?見て分かんないの?写真撮ってるんじゃん、今日の!」
「…」
少し近づいて見ると、スマホの画面には茶々のケーキとカプチーノと、俺のブラックコーヒーが並んでいた。まるで3点セットのように。
「…俺のコーヒーも撮ってんの?だから飲むなって言ったってこと?」
自分のだけ撮っていると思っていたから、予想外だった。つーか、なんで俺のブラックコーヒーまで…。女子って本当によく分からない。
こういう時、あのオネェだったら一緒に楽しんでやれるのだろうか。
「はい、満足!いいよ、飲んでも」
「マイペースだな、お前はよ…」
差し出されたコーヒーを口に含む。その瞬間に、ちょうど良い苦みが広がっていった。おいしい。
でも、そう言えばお腹が空いていることに気づく。12時過ぎ。朝ごはんはつまんできたつもりだけど、何か食べるものを頼んで来ればよかった。