たぶん、トクベツちがいな恋。
「…お前、古典はできるよな。解くのもはえーわ」
細い指が、答えを書き込んで、マークには丸をして。集中して黙々と進めていく彼女を見ていると、自然と笑顔が出た。
ちゃんと、毎日頑張ってるんだと思う。根は真面目で自分に厳しいから、こういう時の茶々はすごいと思ってしまう。
…つーか、今日の俺、ここにいる意味あんのかなって思うくらい。多分、この問題に関しては俺は必要なさそうだ。
問題集とにらめっこをしている茶々を横目に、コーヒーを口に含んだ。サラサラの髪に、太陽の光が当たって、キラキラと揺れている。
今、茶々と2人でいることが、嘘みたいだった。2人で行動することはよくあったけど、こうやってわざわざ休みの日に会ったりなんかしたことなかったから。
受験だから。他に聞ける人がいないから。きっとそんな理由で呼ばれたんだろうけど、ちゃんとそばで応援できるなら、なんだっていい。
「ねぇ、近海」
「うん?」
「ここの訳ってさ、反実仮想であってる?」
「んん…?あぁ、そうだな。反実仮想で訳していいよ」
「わかった」
俺が一番苦手な和歌と向き合っている。源氏物語って和歌までも難しいんだよな。
「できた。今日の国語は終わり」
「え?もういーのかよ」
「うん。古典は得意だから。この後数学やるから見てほしい。三角関数」
注文したチョコレートブラウニーとやらをひと口運びながら、茶々はその大きな目を再び俺の方に向けた。
ようやく俺の出番か。
「…うまい?ケーキ」
おいしさに感動しているのか、目がキラキラしているような気がする。こういうところはやっぱり、かわいい。
「チョコレートブラウニーね。おいしいに決まってんでしょ。あたし一押しのチョコレート専門店なんだから!」
「ふーん…。俺にはあんまり違いが分かんないけど」
茶々がおいしいって、しあわせだって感じてるならそれでいい。ここがコイツの一押しか。覚えておこう。