たぶん、トクベツちがいな恋。


甘い匂いが鼻をかすめた。チョコレート専門店だから、どこもかしこも甘い匂いしかしない。そんなことを考えてスマホを開いていたら、目の前に何かが差し出されていたことに気づく。

…より、甘い匂いが増す。


「…え?」


思わず、間抜けな声を出してしまう。甘い匂いの原因を追っていくと、さっきから俺をとらえている大きな目が再び視界に入って。


「…なに、これ?」


目の前にある、ケーキと茶々の方とで、何往復も目を泳がせる。


「何って。違いが分からないっていうから。ひと口味見してみなさいよってこと」

「…え!?」


味見って。これを食えってことかよ。いや、甘いの苦手とかそういう問題じゃなくて。これってさっきコイツが食べてたやつの欠片じゃないのかよ。

…こんなこと、簡単にいうやつだったっけ。コイツって。


「…いや、あの…」

「なに?甘いの嫌いなんだっけ」

「いや…そういう問題じゃなく…」


突然やってきたこの状況に、情けなくもうろたえてしまった。もう19なのに。何気なくやっている茶々の行動に転がされるとは。

しかも、フォークは茶々が持ってるってことは、このまま食べろっていう…そういうこと?


「…変な近海」

「…っ」

変なんかじゃないだろ。男だったらみんな期待するだろ。こんな状況だったら。

それでも、変に意識しすぎるのも恥ずかしくなって、そのまま右手側に用意されている茶々の手首を掴んだ。


「ちょ…、なに…」

「食えって、お前が言ったんでしょ」

「…!」


手を掴まれた瞬間、少し抵抗した茶々を差し置いて、そのままフォークごと口の中に運んだ。

その瞬間に、甘い味が広がって、なぜかぶるっと身体が震えた。



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