たぶん、トクベツちがいな恋。
「ん…、ほんとだ、うまいじゃん」
「…っ」
顔を上げると、いつもより茶々の顔が近くにあった。その顔は、少し赤みを帯びて、固まっている。
…何照れてんだ、自分からやっといて。
「…照れんなよ。そんな顔されると、こっちまでなんか恥ずかしいんだけど」
掴んでいた手首に力を入れた。細い腕。離したくない。せっかく、触れているのに。
「っ照れてない…!ちょっとびっくりしただけでしょ。本当に食べるとは思わなかったんだもん」
「…なんで?」
「だって、は、半分は冗談で言ったし。それに、そんなにちゃんと食べると思ってなかったし…」
ほんと、なんで今更こんなに照れてるんだ、コイツは。
「食べるよ。茶々がくれるって言ったんじゃん」
「だ、だから!そこで本当にがぶって食べるとは思ってなかったって言ってんの!もう!本当にこういうとこ、昔から軽い!」
「…」
照れるとすぐ怒る。これが、彼女の防衛方法だ。昔から。悲しくても怒る。そんな様子を見ているのも、顔を眺めるのも、嫌いじゃないんだ。
でも。
「…軽いってなに。軽くなんかねーよ」
やっぱり、今になってもそんな風に思われるのは、少し傷つくわけで。
「確かにお前にも今までかっこ悪いとこ見せてきてしまったのかもしんねぇけど、こんなんされて、俺だって全然平気なわけじゃねーんだわ」
茶々は、きっと俺がものすごく緊張していることも、悩んでいることも、何も知らない。知らなくて当然だ。俺も、そんなこと一言も言ったことなんてないんだから。
でも、すこしくらい、「もしかして」って思ってくれてもいいんじゃないか。
自分に、俺の気持ちが向けられていること、気づいてもいいんじゃないか。
…そんなこと、思ってしまう俺も、どうかしてるんだろうけどさ。