たぶん、トクベツちがいな恋。
「…俺がなに?」
「…!」
ビクッと、華奢な肩が揺れた。相変わらず逸らされている視線を、身体を持ち上げて無理矢理追う。
「茶々」
「ちょっ、やだ!コッチ見ないで」
「やだね。俺だけ散々けなされといて、それはねーだろ。隠すな」
「…っ」
少しだけ見えた、茶々の表情が、少しだけ苦い色を含んでいた。照れているというわけじゃない。
薄くて小さいくちびるを噛み締めて、眉毛を下げて、なにかを考えている。
いつも泣く前に見せる顔と、同じ。
「…だって、近海だって…」
「ん?」
気がつくと、小さな左手は、キュッとスカートを掴んでいた。
「…近海だって、変わってるじゃん。お休みだから私服は仕方ないとして、服装だって少し変わったし、わたしの言うことばっか聞くし、時間の使い方だって変わったし、しまいには払うって言ってるのに奢ったりするし…!」
「…は?」
一瞬、茶々の言っていることが分からなかった。もっと具体的なことを言われるのかと思っていたけれど、なんて抽象的。
「…この間まで同じ高校生だったくせにさ!急に大学生ぶって、大人ぶって…」
「…」
「高校生の時は、茶々と同じ目線に立っていたのに!」
「……」
…要は、変わってしまった俺を見て、コイツは少し寂しかったって訳しちゃって、いいのだろうか。
「この間のパーティーの時から、なんかやだ。みんな変わりすぎ。茶々だってあと少しで卒業するけど、それでも置いていかれてそうで怖いんだもん」
「…!」
言葉を重ねていくたびに、茶々の声は小さくなっていく。
下を向いていくたびに、サラサラの髪の毛で、顔は隠れていった。