たぶん、トクベツちがいな恋。
『…もしもし』
「…」
コール音が5回ほど鳴り響いたあと、右耳で少しフキゲンな声が聞こえた。茶々だ。出た。
「…おはよ、茶々」
『…おはよ。ていうか、起きてたんだ。あんなに夜中まで起きてたのに』
大学生は気楽でいいわね、なんて嫌味を言いながら、茶々はため息をついた。
「今から塾なんだ?つーか、いつからそんなもの行くようになったわけ?」
どうりで、勉強について質問がこないと思ったら。
『12月から。冬季講習だけね』
「ふーん」
そんなの行かなくたって、俺が教えてやるのに。呼べばいいのに。毎日行くことはできないから、現実的じゃないってことは、分かってるけど。
「…お前、入試っていつだっけ?私立だから早いだろ?」
『2月17日。センター終わって、1ヶ月くらい』
「そうだよな」
…当日までには、1回会っておきたいな。なんつーか、心配だ。どうせ試験日には東京まで出てくるんだろうけど。
「受験終わったら、お疲れ様会しような。みんな呼んで」
『お疲れ様会?いいよそんなの…』
「よくねーよ。頑張ってんだから、それくらいはしないと。計画立てとくわ」
茶々が黙った。スマホの向こう側で、車が走る音だけが聞こえる。
「…茶々?」
『…ん』
…あ、反応した。
「何黙ってんの、お前」
会えないって、もどかしい。こんな時、茶々がどんな気持ちでいるのか、どんな顔をしているのか、まるで読み取れない。
ただでさえ口数も少なければ、言うことも無愛想で分かりづらいやつなのに。