たぶん、トクベツちがいな恋。
『…ほんとにバイトしてるんだね。なんか、大学生って感じ』
「え?いや、大学生だけど…。もしかしてまた変わっちゃってるのがイヤとか、そんなこと考えてる?」
この前、カフェで言われたことを思い出す。
『………うん』
少しの間、黙り込む時間が続いたかと思うと、放たれた言葉に胸が鳴った。
…茶々は、本当に俺の気持ちに気づかない天才だと思う。こんなことを言われて、期待しない男なんかいないと思う。俺だってそうだ。情けないくらい、顔が緩む。
「変わらねーよ、安心しろって」
『…別に、不安になんかなってない』
「でも、心は安らかじゃねーんだろ?受験もあんのに、そんなこと気にすんな。全然、変わってねーから。俺もみんなも」
『…』
…今、茶々はどんな顔をしているんだろう。そばにいる時は、ちゃんと顔を見てその表情を確認することができたのに。
「大丈夫だ」って言って、安心させることができたのに。
『…もう、塾に着く』
電話の向こうで、茶々が少し不機嫌そうにつぶやいた。さっきの俺の言葉に反応がないってことは、どう答えたらいいのか分からなくなってるんだ、きっと。
「おう、電話終わろうか。出てくれてありがとな」
『…別に』
素直に認めないその口調、そして態度。さすが茶々だと思うと口元が緩んだ。
「じゃーな。頑張れよ」
また、電話してやろうと思った。頑張ったら、その分褒めてやろうって。それが、俺ができる唯一のことだって。
…そう思っていた時に、スマホの向こう側で、周りの音と一緒に、聞き慣れていない声が響く。