たぶん、トクベツちがいな恋。


『ちゃーっちゃん』

「……」

『ひゃっ…!?』


それと同時に、響く茶々の声。相当びっくりしたのだろう。声が割れて、耳に響いた。鼓膜がじんと痺れた。

というか、茶々がそんなに驚くってことは。茶々以外の人の声がこんなにはっきりと聞こえるということは。

…茶々の、すぐ近くにいるってこと。


『ちょっ…、右京くん…!?突然話しかけて来ないでよ!』

『ごめんって。綺麗なツインテールが見えたもんでね。おりゃっ』

『ひゃ!!?冷たいわね何すんのよ!!』


………。


俺を放っといて、向こう側で何やら楽しそうに会話をしている。忘れ去られてんのか、俺は。

つーか冷たいって、何が? 手?

ていうか、右京くんって誰だ。初めて聞いた名前だ。


「ちょっと、茶々?」


電話を切るべきかどうか迷って、そのままはしゃいでいる茶々に声をかけた。すると、少し焦った様子で、電話に戻ってくる。声が、一番近くで聞こえた。


『あっ…、ごめん近海。じゃあまた今度勉強教えてね』

「えっ? は?」

『あの、時間ギリギリなの!だからまたね!!右京くん、早く行くわよ』


………。


茶々の電話は、その言葉を残して切れた。
ツーツーと、冷たい音だけが耳元に響く。


「…」


最後、ウキョウクンの名前を呼んで切りやがった。同じ塾の奴ってことなのか。

それにしても、茶々へちょっかいを出していたあたりからして、ちょっとクセがありそうな感じだったような。

会ったこともない人のことを、こんな風に考えることも意味が分からないけれど、今までには感じたことがない感情が、ふつふつと生まれてきていた。



< 57 / 166 >

この作品をシェア

pagetop