たぶん、トクベツちがいな恋。


『それで?なんの用なの?』

「あぁ、あのさあ、さっき珠理から電話があって。大晦日、みんなで集まって鶴岡八幡宮まで初詣に行こうかって話が出てるらしいんだけど。茶々は…その、受験前だし、無理だよな…?」


って、なんでこんなに誘うだけでキンチョーしてんだ、俺は。
クソ、別に2人で行くわけじゃないのに、昔のトラウマが発動するのか、ものすごくこわい。


茶々は、うーんと考え込んでいたけど、しばらくして、少しだけ申し訳なさそうな声で言った。


『…実はね、塾のみんなで初詣行こうって話が出てるの。塾が始まる前に、人も落ち着いてる時間に行こうかって。だから、今年は…その…』

「…あ、あぁ〜〜!」


そうかそうか、塾の奴らと。

そりゃそうだよな。受験生に夜中出てこいと誘う方が、どうかしている。夜は寝ないと勉強にならないし。

…そんなこと、分かってるはずだったのに。


「いーじゃん、行って来なよ。誰と行くの?初ちゃん?」


初(はつ)ちゃんは、茶々の同い年の友達。気が強い性格だから、なかなか気を許せる友達もいないらしい彼女が、唯一心を開いているクラスメート。

同じ塾に通っているらしく、何度か俺たちのメッセージのグループでも嬉しそうに話していた。


『うん、初も行くよ。それから、ほら。この間ちょっと電話した時に出てた、右京くんって覚えてる?』

「…」


“ 覚えてるわけないか ” と、まるで独り言のように片付けていく茶々。

そして、“ ウキョウクン ” という響きに、また反応してしまった、俺。

覚えてるわけないかって。覚えてないわけがない。茶々に馴れ馴れしくしていた男。電話で、一瞬だけ聞こえた声。


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