たぶん、トクベツちがいな恋。


俺が今年の春、生まれ育った鎌倉市を出て東京に移り住んでから、茶々と会う機会はグッと減った。

今は東京で一人暮らしをしているし、茶々は高校生だからまだ実家暮らしだし。

たまにこうやって、俺が実家に帰った時とか、休みの日に会っては、勉強を教えている。


…1年前は、まだ俺も高校生で、茶々の周りで生活していたのに。



「…近海、今回はちゃんとパーティーの材料買ってあるの?」

「おー。前に誕生日会をやった時、材料くらい買っとけって珠理に怒られたからな」

「…あー、そんなこと、あったね」



…11月20日。この日に、俺の家に集まるのは、2年ぶりだ。



「…去年は、珠理がアメリカにいたからできなかったんだよね」

「そーそー。毎年恒例だったのに、記録が途切れた年だったわ」


はぁ、と、1年前を思い出してため息をついた。

そんなに深刻に考えていたわけじゃないけど、思ったよりも大きかったそのため息を聞いていたらしい、目の前の大きな目に捕らえられた。


「…近海、嬉しいんでしょ」

「は?なにが?」

「2年ぶりに、珠理の誕生日を祝えて」

「…」


…珠理の、誕生日を祝えて。


にやっと笑いながら、俺の方を見る彼女に、思わず眉毛を真ん中に寄せた。


この意地悪に見透かしてくるような目は、あまり得意じゃない。



「うれしーのは、お前も同じだろーが」


…今回の主役・美濃珠理(みのう しゅり)は、俺たちの真ん中。


俺と茶々を繋いでくれた、俺の親友。


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