たぶん、トクベツちがいな恋。


すぐにめごちゃんの声が耳に届いた。ちょうど向こうも昼食どきらしい。「急にごめんね」と謝る彼女の声も、電話越しだといつもと違う感じがした。

珠理と何かあったのかと一瞬心配になったけど、出てきたのは奴の名前ではなかった。


『…近海くん、茶々ちゃんとなんかあった?』

「…」


なんかあったと聞かれて、「何もない」と答えられるほど嘘も上手くなければ、隠す必要もないと思ってしまう。


「…なんで?」


わざわざ電話をかけてくるってことは、茶々はめごちゃんに何か言ったのか。


『…昨日、茶々ちゃんから話聞いたよ。それから、珠理からも』

「珠理?」

『うん、近海くん、茶々ちゃんたちが学校見学に来てたこと、珠理にも行ってからバイト行ったんでしょう?そう聞いてるけど…』


おそるおそるといったように、めごちゃんは俺にそう言った。

確かに、あれから俺はちゃんと珠理に連絡を入れた。茶々たちをそのままにして、バイトに行ってしまったから、もし時間ができたら声をかけてほしいって。

でも、それに対して珠理からの返信はなかった。だから、会えたかどうかも分からなかった。今日だって、珠理のこと見てないわけだし。


『茶々ちゃんと昨日電話してたんだけど…、ずっと近海が近海がって怒ってるばっかりで、わたしもよく分かんなくて』

「ええ?」

『しまいには、近海なんか大きらい!とか言い出すから、さすがにそれは言いすぎだよって言ったんだけど』

「…」


…アイツ。
めごちゃんとの電話でも俺の悪口を言いやがって。何にそんな怒ってんだ。

昨日のイライラを思い出して来た。さっき直矢たちに話してクールダウンした効果が、すでに失われようとしている。


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