たぶん、トクベツちがいな恋。


もういいよめごちゃん、と言いかけたところで、彼女は「でもね」と付け足した。


『茶々ちゃん、ちょっと言いすぎたって反省もしてた。近海くんのこと、怒らせたって。謝りたいって』

「…えっ?茶々が?」

『そう。理由はよく分かんなかったんだけど、近海くんはちゃんと分かるんでしょう? だから、茶々ちゃんが何か話して来たら、ちゃんと聞いてあげて欲しくて』

「…」


…茶々が、俺に謝りたいって思っている。

言い合いは幾度となく重ねて来たけど、彼女がそんな風に思っているなんて、知りもしなかった。今までは、なんとなく元通りになることが多かったから。

…あぁ、そうか。俺が、今まではあまり本気で怒ったことがなかったから。


昨日が、トクベツだったんだ。


『茶々ちゃんって、不器用じゃん。特に近海くんのことに関しては、そうだと思ってるの、わたし』

「…」


なぜ、そう思うのかについては、めごちゃんは教えてくれなかった。
でも、もう一度だけ、「聞いてあげてね」と言われて、その電話は切れた。

「…」


聞いてあげてね、と言われましても。俺から連絡しろってこと? それとも、茶々からの連絡を待てってこと?

つーか、昨日茶々は、あれから珠理にもめごちゃんにも愚痴ってたってことか。昨日の俺との言い合いを、ずっと怒ってたってことか。

…それでも、最後は俺に謝りたいって思ってくれたって、ことか。


「…」


“ 男がダメージ受けてやるもんだよ ”


ダメージ、受けてたのかな、茶々は。

そうだとしたら、ちょっと言いすぎてしまったのかもしれない、なんて。少しだけ、反省してしまった。


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