たぶん、トクベツちがいな恋。

・・・


茶々とは、距離が離れてから、頻繁に連絡を取り合うようになったと思う。
そうしょっちゅうかかってくるわけじゃないけれど、確実に高校の時よりは電話をする回数は増えた気がする。

めごちゃんに言われたことを思い出して、帰ってからは見えるところにスマホを置いて過ごしていた。

すると、本当に夜の10時頃にスマホが震えた。茶々からだった。


「…もしもし」


いつもより遅い電話。塾の帰りだろうか。


「茶々?」

『…』

向こう側から、声はしばらく聞こえなかった。どうやら、昨日喧嘩別れした俺に、どう反応したらいいのか分からない様子。

でも、残念。それは俺だって同じ。黙りっぱなしの彼女に、どう反応したらいいのか分からなかった。


ザザザ…と、雑音だけが聞こえる。車の音だろうか。ということは、茶々は今、外を歩いているのだろうか。

周りに人がいる気配はない。ウキョウくんは、今日はいないらしい。多分。


「…黙ってるなら、切るけど」


先に痺れを切らしたのは俺だ。沈黙の空気に耐えられなくなってそう言った。ダメージも受けられていない。ツンツンした答えしか出ない自分を叩きたくなる。


『……とう』

「なに?聞こえねー」


本当に聞こえない。こっちの周りは静かでも、茶々の周りはうるさい。雑音が多すぎる。


「なに、茶々。もっかい言って」


『ありがとうございましたって言ってんの!』

「…!」


怒っている声が耳元で響く。あまりの大きさに、音が割れた。

「うるっせ…。お前、叫びすぎ」

『だって!近海が!』

「俺がなんだよ」


何が、ありがとうございました、なんだ。昨日のことか?謝りたいって思ってる奴が、お礼を言うってどういうことだ。

不器用にもほどがある。


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