オレンジ色の恋 ~切なさは誰の物?~
1.
遠くに見えたその笑顔に、私は無意識にスマホのカメラのシャッターを押していた。
「結花?どうしたの?ぼんやりして」
そんな私を不意に呼んだ声に驚いて、私は慌てて振り返った。
「あっ、なんでもないよ」
とりあえず繕うように笑顔を向けた私を、不思議そうな顔でみつめる友人の亜美の視線に、また心臓の音が大きくなった。
「なにかいい物でもあるの?」
私の見ていた方に、亜美も視線を向けた。
「どうしたの?二人とも!」
そんな私たちを追うようにやってきた、知子と亜理紗の呼ぶ声に私はホッとして皆に声を掛けた。
「なんでもないって!早くいかないと学食の席が取れなくなるよ!」
「ああ、そうだった。行こう!」
笑いながら小走り走り出した友人達の後姿を見ながら、私はもう一度振り向いた。
激しく吹いた風に、目を瞑って開くと、そこにはもう君の笑顔はなかった。