和泉くんの考えてることはわからない。
とりあえずは、今俺のことしか考えられなくなってる花宮さんを見たらもういいかな、なんて。
「可愛いね、栞里は」
「な、ななっ…!」
「クスッ、いじめがいがある」
きっと今の俺の表情は相当意地悪なんだろうな、というのは、彼女の俺を見る目で見て取れた。
厄介な感情を自覚してしまったとも思うけど、それはそれで面白かったりして。
ムカつくことには代わりないけど、あのキスよりも前に俺が彼女の唇を奪ってることに若干の優越感があることは内緒。
花宮さん本人も覚えてないその事実をわざわざ言う気もない。