和泉くんの考えてることはわからない。
「…花宮さん」
「なっ…!」
「これでいい?」
フッと意地悪に口角を上げた和泉くんは、確かに私のことを呼んだ。
けどそれは、名前ではなくいつも通りの苗字呼びなわけで。
「い、和泉くんの意地悪!」
「花宮さんが単純なだけでしょ」
ムッとして見上げる私に、これ以上和泉くんの視線が交わることはなかった。
結局、最後まで和泉くんが私の名前を呼んでくれることはなくて。
「じゃーね、花宮さん」
和泉くんは私を家の前まで送っていくと、元来た道を引き返して帰っていってしまった。