和泉くんの考えてることはわからない。
「じゃあ、俺の名前呼んで。そしたらご褒美でしてあげるから」
「な、名前って…」
「苗字じゃなくて、名前。はい、どーぞ」
和泉くん……意地悪度がエスカレートしてる気がする。
こんなにも私がドキドキしてることを、分かってやっているのだろうか。
「ほら、栞里。呼んで?」
クイっと顎を持ち上げられ、至近距離。
不敵に笑う和泉くんを前に、"呼ばない" という選択肢はもう消されている。
「あ、あお……」
「ん?」
ドキドキと心臓がうるさい。
ただ名前を呼ぶだけなのに、どうしてこんなにもドキドキするんだろう。