和泉くんの考えてることはわからない。



「……蒼くん」

「ん?」

「手、離さないでね」

「もちろん」


大丈夫だ。蒼くんがいる。


蒼くんが、いてくれる。




タクシーに乗り込んだ私は、更に手に力を込める。


久しぶりに乗って、無意識に足が震えた。




「私ね、パパとママを目の前で亡くしたんだ」

「……え?」

「小学生の時に亡くしたって言ったでしょ?交通事故だったの。タクシーに乗ってて」



突然話し出した私に、蒼くんがこっちを見た。



繋がれた手が温かくて安心して、ポツリポツリと話し出す。


別に隠してたわけじゃない。けど、早苗にすら言えていない事故のことを。


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