和泉くんの考えてることはわからない。



***



「栞里ちゃん!」

「慎くん…」


病院に着いて、お婆ちゃんがいるという病室に案内されると、そこにはベッドに座っているお婆ちゃんと、その横にお爺ちゃんと慎くんの姿があった。



「お婆ちゃん…っ」

「ごめんね、シオちゃん。不安にさせたね」


ニコリと困ったように笑うお婆ちゃんだけれど、見た限りどこも包帯のあとは見当たらない。



「乗ってたタクシーの目の前に子供が飛び出してきて、それを避けようと急ブレーキをかけたら近くのガードレールに突っ込んだって」


事情を知っているらしい慎くんが、その時の状況を教えてくれる。



「でも運転手もお婆ちゃんも無事。歳のこともあるから今晩だけ検査入院ってだけだから。大丈夫だよ、栞里ちゃん」

「よかった。よかった〜…」



思わず涙が出てきてしまって、それを見たお婆ちゃんが「ごめんね」と謝る。



< 297 / 326 >

この作品をシェア

pagetop