和泉くんの考えてることはわからない。
「何、キスでもされるかと思った?」
「…ッ!」
図星なのかビクッと肩を震わせるその様子に満足する俺は、ハタから見れば最低なんだろうか。
「栞里」
「っ、はい…!」
でも、俺が「栞里」と呼んだだけで彼女は嬉しそうに目を輝かせるから。
「キスは、お預けな」
どうしても、意地悪をしたくなってしまうんだ。
「い、和泉くんの意地悪…っ!」
「花宮さんって本当からかいがいあるよね」
今は、これだけでいい。
この時の俺は、まだ自分のこの感情の名前に気付いていなかった。