短編集
『ごまかすなって……』
廉が私の腕をつかむ。
その力はそんなに強くないのに、ものすごく痛い。
「ごめん、話してっ……。」
それだけ言うのが精一杯。
痛くて泣きそう。
『汗びっしょり。』
そうやって笑う廉。でもなんだか悲しくて。
急に泣きたくなって。
「……っ…さ、き。いっ……てて。」
涙と掴まれたところがピリピリすることを隠して、精一杯、笑顔でいう。
『……? わかった……。』
廉が見えなかなったあと、私は思いっきり泣いた。
当たり前だけど、誰も私の痛みを聞いてくれなくて、辛くて、寂しくて。
ああ、隠すとか、バレないようにとか、最初からそんなの望んでないんだ。