短編集
休んだら負け。
あの子達の前で泣いたら負け。
誰かに“助けて”って言ったら負け。
告げ口も負け。
「はぁ。」
登校時間はとっくに過ぎてるけど、たまたま開いてた門を通って、下駄箱へ向かう。
「……っえ。」
そこには、私の上履きも私のネームプレートもなかった。
仕方なく、裸足で廊下を歩く。
外は暑いくせに、冷房の聞いた校舎の床はとっても冷たくて。
また涙がこぼれそうになる。
* * *
「おはよー、ございま、す。」
扉を開けるとクラスメイトの視線。
その中には廉もいる。
でもできるだけ目をあわさないように自分の席に向かった。
先生:どうしたんだ、原田。遅刻なんて珍しいなぁ。
「寝坊でーす。」
できるだけ、明るく言う。
そうじゃないと、今にも涙がこぼれそうだから。
先生:明るく言えばいいってもんじゃないぞー。