短編集
「ごめんなさーーい。」
あはは、と笑う何も知らない女の子。
つまらなそうにケータイを見る男子。
黙々とワークを解く優等生。
ずっとこっちを見てるあの子達。
そして……廉。
私は誰にも涙を見せない。
休み時間になって、廉が私の席まで来た。
あの子達の顔がひきつるのがわかる。
『ちょっといい?』
騒がしい教室には少し小さすぎる廉の声。
でも私はちゃんと聞き取ったよ。
『あのさ、隠してないで言って。』
人気のない屋上へ繋がる階段。
私の前を歩いてた廉が、私の方へ振り返っていった一言。
「隠し事なんて…ないよ?」
『ううん。ある。』
「ないってば。
もう、行くね……。」
これ以上言われたら、多分泣いてしまうから。
でも廉はいつもみたいにそっか、で終わらせてくれなかった。
『俺はそんなに頼りないかよ!?』
ごめんね、そう心の中で言って私は廉を見ないように教室へ戻った。