短編集
廉が長袖で隠された私の汚い腕を見ようとする。
「だめっ…、れ…ん…、やめてっ!」
『大丈夫、痛くないよ。』
その声が優しくて、力が入らなくて、結局廉は見てしまった。
あざまみれの、私の腕。
ちょっとやそっとじゃならないあざ。
『…だよ、』
「えっ?」
『誰だよ?!こんなことしたやつ?!』
廉の顔は怒りで真っ赤だった。
いつも強気のあの子たちでさえ、いつもは温厚な廉が顔を真っ赤にして怒鳴っているのを見て、立ち尽くしていた。
騒がしかった教室も一瞬で静まり返った。
当然かもしれないけど、誰も廉の問いには答えなかった。
* * *
さっきの階段で廉が私を抱きしめる。
むき出しにされた私の腕は、そのままだ。
『もっと早く気づいてやればよかった。』
そう言って、より一層強く私を抱きしめた。
「ううん。私が言わなかったのが悪いから。」
そうだよね、と廉がつぶやく。
廉は顔を上げていった。
『約束しよ。』
「約束?」
『何かあったら絶対俺に言うこと。』
「ええ。それは……」
『今回だって俺が気づけなかったら梨加、死んでたかもよ。』
ただでさえ、もう手遅れ状態なんだからさ、と廉が笑う。
そして、私のあざに、キスをした。
「ちょっ、と何やってるの。」
『早く治るためのおまじないだよ?』
「やめてよ、もう…。」
『じゃあ、こっちは?』
廉が指差したのは唇。
いつの間にか大人になってた廉に感心しながらも
「ここは学校ですよ!」
と笑った。
P.S...あの後ちゃんと上履きが戻ってきました。