短編集

私が今まで付き合った男の中で"平岩大我"って人がいた。
彼は本当に何も言わない人で、私が何を聞いても

『大丈夫。』

しか答えなかった。


"大丈夫"って言葉は都合がいい。
何を言われてもそう答えられる。

そう思うようになったのも彼のせい。



おしゃべりな私は、はじめは私の話を黙って聞いてくれていい人だな、って思ってた。

でもだんだん、物足りなくなってきて。


極めつけは、親友とのダブルデート。


親友とその彼氏は楽しそうにいちゃいちゃしてて、つい、いいなぁ、って思っちゃって


1個のタピオカを二人で飲んでる彼らが羨ましくて、私達も飲もうよ、って声をかけた。

そしたら彼は一言、『大丈夫。』って。

『大丈夫、いらない』の"大丈夫"なのか、
『大丈夫(飲んでもいいよ)、一緒に飲もう』の"大丈夫"なのか、
私にはさっぱりわかんなくて、結局買わなかった。

そして親友には“あんたと彼氏さんってなんかあってない”って言われるしで、交際三ヶ月で、別れてしまった。
< 22 / 35 >

この作品をシェア

pagetop