短編集
私が今まで付き合った男の中で"平岩大我"って人がいた。
彼は本当に何も言わない人で、私が何を聞いても
『大丈夫。』
しか答えなかった。
"大丈夫"って言葉は都合がいい。
何を言われてもそう答えられる。
そう思うようになったのも彼のせい。
おしゃべりな私は、はじめは私の話を黙って聞いてくれていい人だな、って思ってた。
でもだんだん、物足りなくなってきて。
極めつけは、親友とのダブルデート。
親友とその彼氏は楽しそうにいちゃいちゃしてて、つい、いいなぁ、って思っちゃって
。
1個のタピオカを二人で飲んでる彼らが羨ましくて、私達も飲もうよ、って声をかけた。
そしたら彼は一言、『大丈夫。』って。
『大丈夫、いらない』の"大丈夫"なのか、
『大丈夫(飲んでもいいよ)、一緒に飲もう』の"大丈夫"なのか、
私にはさっぱりわかんなくて、結局買わなかった。
そして親友には“あんたと彼氏さんってなんかあってない”って言われるしで、交際三ヶ月で、別れてしまった。