短編集
夏目大毅side
昔から照れ屋で、思ったことを口に出すことなんてほとんどなかってん。
彼女に「好き」なんて言ったん、告白したときだけやったと思う。
今日だけじゃなかった。
多分何日も前から別れを告げるつもりやったと思うだけど。
でも俺が気づかぬふりをしてただけで。
__パタン
ドアが閉まるその音が、俺とあいつの終わりを告げた。
21時、あいつが家を飛び出して10時間。
本当に帰ってこないつもりなんか……ってようやく心配になってきた。
「俺、ほんまなんにもわかってなかってんなー……」
ふっと、頭のなかにあいつの笑顔が浮かんだ。