見た目通りには行かない
昼下がりのオフィス





時計の針が午後3時を指したとき、ふわっと柔らかな香りと共にコーヒーの芳ばしい香りが運ばれてきます

お昼休憩のあとのオフィス
お腹も膨れて少しだけみんなから聞こえてくるパソコンのタイプ音も眠たそう


「少しだけ休憩」と言いながらみんなにコーヒーを配っている彼女に周りは大慌て

「麗さん、私がします!すみません」


特に後輩の女性社員は顔が真っ青

「いーの!ほら、奈々ちゃんのカップ」

そう言って女性社員には微笑む
奈々と呼ばれた女性はほんのり頬を染めて「ありがとうございます」とカップを受け取り
柔らかな香りは彼女の長い髪が靡くたびに漂っています



「麗ちゃん、ありがとう」

そんな様子を見ていた年配の男性社員は自分のコーヒーカップを手に取って彼女にお礼を言うと
「私が飲みたかったので」と優しく笑って他の社員にも配っていきます



この、麗と呼ばれた彼女は川口麗(うらら)


大学卒業後入社して、二年目の23歳
この、企画部ではちょっとした有名人
いやいや、この会社"正木コーポレーション"でかもしれません



大学は一流大学を首席で卒業した程の才女であり
大学四年間はミスの座を明け渡さないほどの美貌を併せ持つ
所謂、才色兼備


麗が入社した二年前は彼女のスーツ姿に、仕事ぶりに何人もの男が見惚れたことか


美人で仕事もできて、近寄りがたい
それでもなんとかお知り合いになろうと周りは必死


そんな、男性社員が夢中の彼女はさぞかし女性社員からは妬みの対象でしかないでしょう




< 1 / 98 >

この作品をシェア

pagetop