見た目通りには行かない




「おい、尊!」



スタスタと長い足で足早に歩く尊を呼ぶが応答なし


なんだ?なんか、様子が…


俺達はいつものように夜の見張りをしていた


そんな時、女がチンピラに絡まれてるのを見付けて声を掛けた
男は最初は意気がっていたが、俺達の姿と
わざと俺が呼んだ尊の名前で"正木尊"に繋がったのだろう


みるみるうちに顔を青ざめそそくさと逃げて行った


小さい男



捕まっていた女が顔を上げて一瞬息を飲んだ


かなりの美人
いや、どことなく可愛い雰囲気もあった


まさに、いい女

あんなチンピラごときに相手に出来る相手じゃねぇな
身の程知らずだな


女は尊をじっと見つめて笑顔を見せてお礼を言ってきた

それには、かなり驚いた
尊を怖がらないなんて

大抵の女は尊を見ればケツを振って付いてくるか目を逸らして逃げるのが定番だ


社長や若頭と言う肩書きに惚れる女は夜の街に行けば山ほどいてる
それでも、さっきの女の様な一般市民はとてもじゃないが尊とまともに目を合わせるなんてできずに怖がるのがオチだ
まぁ、どっちにしろ尊は相手にしないけどな



尊は女の礼に対して何も答えず去ってしまったんだ


俺も慌てて後を追ってチラッとさっきの女を見たら不思議そうに俺たちを見ていたが背中を向けた

ピンと伸びた背中はやっぱりいい女だった


それで、今に至るわけだが
尊が急いでいる様にも感じる
少しでも早くこの場を離れようとしているのか……









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