見た目通りには行かない
ガチャと扉の開く音に空気が変わった
ピリッと張り詰める
その空気だけで社長がいらっしゃったんだとわかり、慌ててお茶を配っていく
他の重役が立ち上がり頭を下げるのに習い手を止めて自分も社長に向かって頭を下げた
社長の高そうな靴を見るのが精一杯
みどりさん!こんな時に社長の顔を拝む余裕はありません
「お前……」
私の頭上でそんな声が聞こえて頭を上げそうになったけど社長が通り過ぎるのを待った
社長の靴が見えなくなって残りのお茶を配って足早に会議室から出た
廊下に出た瞬間漸く息ができたように感じる
なに、あの空気!
経営会議怖っ!
ふーっともう一度息を吐くと逃げるように企画課に戻った
「麗ちゃん、お帰り!社長見た?」
戻った途端そんな話になるが「もう!怖すぎてそんな余裕ありません」と言いながらあの空気を思い出してブルッと体が震えた
「何それ~」なんて笑ってるけど「本当に怖いんですよ~」と半泣きになる
「あとは、終わってから片付けたら良いんですよね?」
「うん、そうみたいよ」
「良かった~」
終わるまでには時間が掛かりそうなので自分の仕事に取りかかった
どれくらい経ったのか、部長が戻ってきた
「麗ちゃん……」
「あ、はい片付けに行ってきますね」
そう言って席を立てば「いや……」と部長は少し言いにくそうに爆弾を落とした
「社長が呼んでる」