見た目通りには行かない
「尊……」
前を歩く尊に声を掛けるが立ち止まる事も振り返ることもしない
これ、昨日と同じ光景じゃん
「探す手間が省けたわ、灯台もと暗しってやつだな」
社長室に入ってから俺は半ばからかう様に言ってやった
絶対、気に入ってるくせに
何にもないように格好つけやがって
「幸輝……」
「なんだよ」
「………本気になって良いか?」
くそっ!
ズルいんだよ!尊は!
そんな情けない声出しやがって!
昔、「俺は女を見る目がない」と溢した尊を思い出した
くそっ!あの女め!
尊を騙しやがって!
尊にあんな顔させやがって
「遊びの女は手切っとけ」
冷たくしか言えない自分に歯がゆさを感じながらも、俺自身も尊が本気になるのを怖がっている
また、騙されたら?
騙される尊を見たくない
それでも、また本気になろうとしてる尊を嬉しく思う
「…………そんな女、いねぇよ」
「は?寝る女位いるだろ
あとあと厄介だそ」
「………一年以上はいねぇよ
あのあと、暫くは自棄になってたけど、そんなの半年位だ」
「そうか……」
やっぱりあの女ムカつく
そして、あんな女に引っ掛かった尊もムカつく
コンコンと扉をノックする音が聞こえて背筋が伸びた
なんで俺が緊張してんだよ
「入れ」
尊の声に遠慮がちに扉が開いた
戸惑いながら「失礼します」と入ってくる女は
やっぱりいい女だった
尊と俺を見て目を見開いた