見た目通りには行かない
「麗ちゃん!だ、大丈夫?社長なんだって?」
企画課に戻ればみどりさんが直ぐに駆け付けて心配そうに聞いてくれた
お茶出しの時は「社長をしっかり拝んできてね」なんて言ってたのに
そんな事は全く聞いてこない
また、天秤がぐらつく
みどりさん………
行きたくない………
いやいや、お礼をしないなんてダメ
みどりさんの優しさにまたぐらついたけど、だめだ!
私は社長室を出てからこの問答を何回も何回も繰り返していた
「麗ちゃんに限って失敗は無いだろうけど……」
「はい、初めてお会いしたからだと思います
挨拶をさせてもらっただけです」
今夜の事はさすがに、みどりさんでも言えない
社長と、なんて
「そっか、良かった」
みどりさんはまた、自分のデスクで仕事を始めた
私も今夜の事を考えて仕事をしながら、ふと、残業になれば良いのでは………
なんて良いアイデア!って思ったけれど
「麗ちゃん、これ営業二課の部長に渡してきて
あとはもうそのまま帰っていいから」
部長は知っているのか?と思うほどに私の思惑なんてバッサリ
そのまま帰っていいなんて言われたら残りますなんて言えない
「はい」と言った言葉があまりに力なくて
部長もそれに気づいたのか資料を渡しながら「見つかっちゃったからね、残念だよ」意味深な言葉を言われた
部長を見るが申し訳なさそうに眉を寄せていた
「………では、お先に失礼します」と挨拶を交わして企画課を出た