見た目通りには行かない
「川口さん、飯でも食いに行こうよ
俺ら腹へったよ」
「あ、そうですね、すみません!着替えますね?」
「え?外に行かれるんですか?うちで食べれば良いじゃないですか?」
「え?あの………」
うちでって………
お前らどれだけ気に入ってるんだよ
「お前ら今日はダメだ」
「………はい、麗さんまた来てくださいね!」
「はい!」
尊の言葉に組員たちは残念そうにしていたが笑顔を見せた彼女に赤くなって恥ずかしそうにする姿にまた笑えてきた
となりでは尊の空気が黒くなったしな
「どうした?えらく騒がしいじゃねぇか」
腰を上げようとしたら組長が入ってきた
組員たちが一斉に頭を下げた
あの、会議の時とは比例にならないほどの迫力だ
川口麗は唖然と立ち竦んでいる
そりゃそうだ、自分の会社のトップであり組長だ
普通の反応だ
「川口さん、行こうか」
そっと声を掛ければ漸く呼吸できたかのようにピクッと体を動かして息を吐いた
そして………
「その節はありがとうございました」
川口麗は組長の前で正座をし頭を下げた
その行動に尊も俺も組員も驚いた
「女か?誰だ?」
組長の低い声が道場に響き渡る
俺が前に出ようとすれば尊に止められた
「正木コーポレーション企画課の川口麗と申します」
「…………川口麗?」
「はい」
そう言って顔を上げた川口麗の瞳からは涙が溢れていた
「中学生の時に絡まれていたところを助けて頂きありがとうございました
あの時の一本背負いは今でも私の目標です」