見た目通りには行かない



夏休み、朝練に向かう私の前に現れたのは同じ中学の三年生の先輩だった


「川口」

進み道を塞ぐように立つ彼は私の名前を知っているみたいだったけど
私は先輩の名前もまだその瞬間は何年生なのか、いや同じ中学と言うことも知らなかった



「え?あの………」

「俺の事わかんないの?」


そう言われても、全くわからない


「俺、同じ中学の三年、高田」



高田先輩と言うらしい
先輩でもなんでも、私は朝練に行きたい



「あ、はい」

「川口、俺と付き合おう」



何だかその言い方に嫌な気分になったけど先輩だし丁重にお断りした
頭を下げ、朝練に行こうとその場を去ろうとしたら腕を捕まれた



「断るなんて考えてられない」


そう言って掴んでいる手に力をいれた
強い痛みを感じて手を振り払おうとしたけどびくともしない


「は、離してください」


そう言うと、先輩の目が怪しく光ったように見えた
瞬時に危ないと感じた
先輩の力が一層強くなりぐいっと引っ張られる
朝練の時間だし人通りも少ない


「や、やめて」


「可愛い」



その声に背筋が凍った


危ない


抵抗する声に比例するかの様に先輩は何度も可愛いを繰り返して力を強めた
ぐいぐいと引っ張られるように建物の裏に連れ込もうとしているのもわかって私も必死


「てめぇ、何してる」


低い声が聞こえた

先輩と私は同時にその声の方見た
私は息をのんだ


そこにいた三人の男性はみんな私たちとは違う空気を醸し出していてその筋の人達だとすぐにわかった
でも、先輩はおかしかった
壊れてたのかも知れない






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