見た目通りには行かない
「邪魔すんな、俺の彼女だから」
そう言って私を離そうとせず、また更に引っ張った
彼女だと言われてしまえば、ただの痴話喧嘩に思われるかも知れない
「い、や」
私はすがる思いでその人達を見た
端から見ればその人達の方が怖く見えるかも知れない
先輩が去ればこの人達に襲われるかもしれない
でも、私にとっては救世主だった
「彼女だっとしても、嫌がってるじゃねえか
感心しねぇなぁ」
そう言って先輩の手をとったのはその中でもさらに強いオーラを感じる人だった
「離せ!」
先輩は狂ったように騒ぎはじめた
何度も私の名前を叫ぶ先輩は本当に壊れていたのかもしれない
挙げ句に先輩はポケットから刃物を出した
その時「そんな物を覚悟のない人間が使うんじゃねぇ」
そう言って、先輩を一本背負いで投げた
もちろん、地面に着くときには最低限の痛みに抑えるように
胸が震えた
完璧な一本背負い
そこに含まれる、先輩への気遣い
「うっ」と一瞬顔をしかめたけど我に返ったようだった
「姉ちゃん、行きな」
その言葉にも優しさがあった
強くて優しい
本当の男
私は、「ありがとうございました」と告げて立ち去った
そのあと、先輩はどうなったかはわからないけど先輩は転校してしまった
噂では親が離婚したとか、クスリをやっていたとか……
生きているのかさえもわからない
でも、私は信じていた
あの人が先輩を救ってくれたと