見た目通りには行かない




そんな彼女が有名な理由はもう一つ




「麗」

「あっ、尊!」



げっ!
みんな一瞬にして背筋が伸びる伸びる



「佐々木」

「は、はい!」


佐々木とは、さっき麗をご飯=合コンに誘った女性社員



「麗を誘うな」

「あ、いやー、すみません」



ちっ!バレたか



「尊?どうしたの?」


尊を不思議そうに上目遣いで見つめる姿にキュンとなったのは尊だけではないでしょう



「いや、なんでもない」



ポンっと頭を撫でて笑う姿に周りはどよめく


キングがわ、笑った!


キングと呼ばれるこの男は正木尊(たける)


この界隈をしきる正木組若頭
所謂、極道
やくざの息子


やくざの息子と言われれば、恐怖に支配されそうですが
この正木コーポレーションも正木組が経営しているのです

尊がいくつか持っている会社の一つで、肩書きは社長
まさにキング


この辺界隈の治安が良いのはこの正木組があるからだとも言われています

社長だからと言って若頭でもある尊がわざわざ昼間に会社に顔を出すなんてことは滅多にありません


いや、ほとんど皆無………だったのです


この川口麗が入社するまでは
いやいや、川口麗が尊の恋人になるまでは


川口麗と尊が恋人同士になったのは一ヶ月程前


麗が所属する企画部はみんなが知っている周知の事実ですが
他の部署には知らない人達の方が多いのです
「私は社長の彼女です」なんて言いながら歩いてるわけでも、背中に書いて貼ってるわけでもありませんから





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