見た目通りには行かない
距離
麗side
たぶん、失敗した
はぁ、とまたため息が溢れ出た
こんな時は……
私は胴着の入った袋を掴んで外に飛び出た
「あ、お兄ちゃん」
久しぶりに実家の道場に顔を出せば朝早いにも関わらず兄がいた
「麗か、久しぶりだな……どうした?」
「え?」
「お前がこんなに朝早くに顔出すなんて……
何か吹っ切りたいことでもあるのか?」
その言葉にハッとした
「はは、男か?」
これまた、びっくり
私の驚いた顔に今度は意地悪な顔を見せてきた
学年が二つしか空いてないから、中学でも高校でも同じ時を過ごした
こんな兄でも学生時代は人気があって、よく「川口くんの妹さん?」なんて言いながら綺麗どころの先輩から呼び出された
「麗ちゃんだー!」
「あ、七瀬さん!」
相変わらず可愛い
「七瀬さん、来てたんですか?」
「うん!」
七瀬さんは高校からの兄の彼女
同じ高校だったので私も七瀬さんの事はよく知ってる
ずーっと七瀬さん一筋
たぶん、惚れまくり
でも、わかる!
七瀬さん、めちゃくちゃ可愛いもん!
高校でもメチャクチャ人気あったもん
「麗ちゃん、また綺麗になった!」
「七瀬さん、また、可愛くなった!」
二人で同時にそんな言葉を言うと兄に鼻で笑われた
「お兄ちゃん!そんなんだと七瀬さんに愛想つかされるよ!」
ベタ惚れのくせに!
七瀬さんが男子と喋っただけで黒いオーラを纏っていたのを私は何度も目撃した
それは今でも変わらない
七瀬さん、会社でも絶対人気あるはずだよ!