見た目通りには行かない
「なぜ、彼女が彼氏がいるとは言わなかったのかはわかりませんが、
もし次お会いした時に同じ答えならばその時は俺がもらいますよ、正木尊さん」
俺が名前を知っていることに驚いたようであったが直ぐに嫉妬の表情を見せた
嫉妬するなら俺だろう
「それはない」
「川口さん、またね」
「また、は無い」
少し拗ねたような声に思わず笑いそうになった
これが、天下の正木尊なのだろうか
確か、歳は25,6だったか?
「彼女のこと相当好きなんですね」
年下と認識してしまったからか少しからかいたくなる
「た、高島さん!」
彼女が戸惑うから、止めておこうか
ふと、違う形で出会えれば正木尊とはどのような関係になるのだろうと考える
ほんのすこし彼の人間味を見てしまったからか興味が出た
仕事上の付き合いになるのか、はたまた友人になれるだろうか
お酒を酌み交わす程度の付き合いはできるだろうか
「川口さん、次会ったらお茶でもしましょう」
もう一度、からかい半分本音半分でそう言って早々に立ち去った
正木尊に咎められる前に
ちょっとだけチクリと痛む胸
たった数日で彼女の心を奪った正木尊への嫉妬と
自分はそれほどに彼女に惚れていたのだと気付いた
正木尊と酒を酌み交わしながらあの時はまだ気持ちを言えてなかったことや
大好きで仕方ない彼女の話をするのはもう少し後の話