見た目通りには行かない




ふわふわした気分は久しぶりのデートの余韻なのか
ビールの余韻なのか



ドンッ



「あっ!」


しまった!
ふわふわしすぎてぶつかってしまった

しかも、今日はデートと言うこともあっていつもより高めのヒール

しっかり足を踏んでしまった気がする
これは痛い



「ご、ごめんなさい!」


慌てて謝って、顔を上げる



「痛てーな、姉ちゃん!おぉ!美人じゃん!
これから俺に付き合ってくれたら許してやるよ」


チンピラ風の男性は睨みをきかせていたが、相手が女だと認識したのかニヤニヤしながら私の腕をつかんできた


触れられた腕の感触に不快に感じながらもあまり長引かせたくもないので
もう一度、「すみません」と言って後退りすれば「うわっ、まじで良い女じゃん」なんて言いながら更に腕を引かれる


反射とは怖いもので引かれると力が入り油断していた男は簡単に引き寄せられた


「おっ?」

急な力に男性は一瞬戸惑った

その隙に……と男性の胸ぐらを掴もうとした時………


「おい、何やってる」と低い声が聞こえたと同時に私の前に大きな背中が見えた


「あ……」


その大きさに安心しながらも危うく男の人を投げるところだったことを思い出した

危ない危ない
慌てて胸ぐらを掴もうとしていた手を引っ込めた



「あぁ?俺のことか?」


その声に少し苛立ちを含んでチンピラ風の男性が睨み付けたように思う

私の腕は捕まれたまま










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