見た目通りには行かない





「麗ちゃん、新人に言い寄られたんだって?」


わざと出した話題に、一瞬で尊の空気が変わる



「麗ちゃんがいい女なのは尊が一番知ってるだろ?今さらなに?」

「……俺自身がずっと片思いしてる」

「「は?」」



結婚して、子どもまでいて一体何を………



「好きでたまんねぇんだよ………麗の気持ちが俺の気持ちを越える事は絶対ない
愛しくて、可愛くて仕方ねぇんだ
だから、麗が俺の傍にいないと落ち着かない
誰かがかっさらっていきそうで怖くなることがある」

「あの女のせいか?」


竜が聞いた
あの女………忘れられない尊を傷付けた女だ



「違う、あんな女の事は思い出すこともない
俺の気持ちが重すぎるせいだ
麗がいないと俺は生きていけない
情けない男だろ?」

「お前はそんないい女を動けなくするほどに今は独り占めしてるんだから自信もて
川口もちゃんと尊を好きなんだから」



竜はポンと尊の肩を叩いた
尊自身自分の気持ちを押さえる術がわからないのだろう
毎日、やきもきしてる



正木組の若頭で
イケメンでクールな男は
麗ちゃんと出会って溺愛甘々男になった

美人で可愛くて、みんなの人気者の麗ちゃん
そんな見た目と違って
ポンポンと男を投げ飛ばすほどの強い女性
近寄りがたいほどにいい女なのに、気さくでおっさん居酒屋でたっぷり酒を飲める女

二人が並べば皆が振り向くほど


見た目通りな二人ではないけれど


見た目通りなんて面白くないよな




「言葉通り溺愛だな」










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