“あなたを愛しています”
梅 “約束を守る”
ー花奈sideー
マイペースで、のほほーんとしていて、能天気な人だと思っていた。
悲しいとか、怒りの感情なんて持っていない人だと思っていた。
そんな司君が……父親を睨み、声を荒げていた。
余裕がなくて、触れたら割れてしまいそうな司君に、私の胸も締め付けられた。
桜庭一家のやり取りに、私が入れるはずがない。
父親は私を排除しようとし、司君は必死に抵抗している。
それだけで嬉しかった。
それだけで十分だった。
でも……やっぱり、司君を諦めるのは辛い。
無謀だと分かっていても、私は司君の隣にいたいのだ。
「俺は花奈ちゃんと結婚する」
その言葉を思い出しただけで、涙が溢れてくるのだった。