“あなたを愛しています”
林さんの言葉を思い出す。
「華道とフラワーアレンジメントは違うものですが、桜庭司の作品には華道の美しさだって感じます」
私には理解出来ない言葉だったが、まさしく林さんの言う通りなのだろう。
司君がフラワーデザイナーとして活躍出来たのも、華道のおかげ。
桜庭家での生活がなかったら、司君は有名なフラワーデザイナーにはなれなかったのだろう。
こんな「伝統」を消してしまうなんて、なんだか切ない。
でも……司君には納得出来る道を歩んでもらいたいし……
私は、司君と離れたくない。
この相反する気持ち、どうしたらいいのだろう。
どうすればみんなが幸せになれるのだろう。
胸を痛ませながら俯いた。