“あなたを愛しています”
一瞬、沈黙が訪れた。
司君は驚いた顔で私を見る。
「まじかよ」
彼の綺麗な顔にはそう書かれていた。
そんな司君を笑顔で見返す。
「庶民生活が飽きたら、桜庭流の家元として伝統を継がなきゃ」
司君はぽかーんとしたまま私を見る。
そして、やっとの事で言葉を吐く。
「花奈ちゃん……馬鹿なの?」
「司君に馬鹿って言われたくないよ」
私だって、出来ればずっと東京にいたい。
何の恐怖も感じず、司君とのほほーんと生きていきたい。
だけど……
「司君が持っている華道の技を、次の世代に伝えるべきだと思うよ。
だって……あんなに綺麗で感動する伝統が消えてしまうなんて……」