“あなたを愛しています”





幸せいっぱいの私に、由希さんが聞く。




「でも花奈ちゃん、せっかくなのに結婚式も挙げないの?」



「はい。お互い式は挙げたくなくて……」




そう言ってしまったものの、胸が少し痛んだ。

もちろん、私は結婚式を挙げたかった。

大好きな人たちに囲まれて、ウェディングドレスを着て、司君の作ったブーケを持ちたかった。

だけど……司君が両親には会いたくないなんて言うから……

だからきっと、いつかは式を挙げたいと思う。

司君と両親が、ちゃんと和解した時には。

その時まで、ウェディングドレスはお預けだ。




「俺の両親だけ呼ばなくてもいいじゃん」




司君はそんなことを言ったが……

そういう問題でもない気がした。

私だって司君の妻として司君を支えて、いつか二人に認めてもらえるようにならなきゃ。

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