“あなたを愛しています”



親の準備した高級賃貸マンションに一人住み、毎日家に帰っているかの電話がかかってきて、大量の仕送りをされる。

このままじゃ、いくら名門私立大にいたとしても友達すら出来ないと思い……思い切って転居したのだ。





転居先は、家賃四万円のぼろアパート。

両親にはもちろん引っ越したことを伝えなかった。

そして、両親名義のクレジットカードカード(しかもブラック)と、数千万円の入った通帳を送り返したのだ。

俺の手元に残ったのは、わずかな残金と自由な時間。

ここから、俺は世間の厳しさを知り、「庶民の暮らし」を知り……ゴキブリと友達になるまで堕ちた。

だけどバイトに明け暮れ、時々サッカーをして、テキトーに授業に出て友達と無駄話をする毎日は、人生の中で一番楽しくて輝いていた。

あー、これが幸せっていうのか。

そのひとことだった。



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